<腸内細菌>人の腸内に棲む腸内細菌たちが‟隠れた臓器”と言われるわけ
今日も昨日に引き続き腸内細菌の話しになります。この腸内細菌が腸内にお花畑のように広がっている様をよく、「腸内フローラ」と呼びますが、これは医学的な呼称ではありません。
腸内細菌の集まりは、腸内細菌叢もしくは腸内マイクロバイオーム(マイクロバイオータ)と呼びます。
腸内細菌のエサの話しは、何回にもわたってして参りましたが、これまでは人が小腸で消化しきれなかった食物残渣を腸内細菌がエサにしているという話しでした。
人は消化酵素で分子レベルにまで食物を分解しないと、血管に栄養素が摂りこめないのです。小腸で摂りこめなかった食物残渣を大腸にて腸内細菌がエサにしますが、これには、難消化性でんぷんであるレジスタントスターチや酒粕の中に含まれるたんぱく質のレジスタントプロテイン、水溶性食物繊維があたります。
これらを腸内細菌が発酵分解し、短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)や補酵素(ビタミンB群やビタミンKなど)を人に提供しています。
要するに、人は自分自身で消化吸収できないもの、すなわち不要物を腸内細菌に提供し、腸内細菌はエサとして食べ、腸内細菌が出す不要物(代謝物)は人にとって有用な短鎖脂肪酸や補酵素になるという、共存共栄の関係が成立しているのです。
具体的な数値で言うと、生体で消費されるエネルギー源の1割が腸内微生物発酵を介して供給されています。このため、腸内細菌叢は‟隠れた臓器”とも呼ばれています。
画像は、レジスタントプロテインを含む酒粕です。レジスタントプロテインはたんぱく質ですが、食物繊維のような性質で小腸内で消化吸収されず大腸に運ばれ、腸内細菌のエサになります。
このレジスタントプロテインの効果で便量が増え、便秘解消になる方もいらっしゃいます。これは不溶性食物繊維の性質のレジスタントプロテインが腸管の便を排出し便量が増えるためと言われていますが、レジスタントプロテインをエサにする腸内細菌がいなければ、短鎖脂肪酸が生み出せず体への健康効果は限定的となります。
明日は、腸内細菌が生み出す代謝物について、もう少し細かく見て行こうと思います。
コメント