【新連載】第3回 / 「木を診る」西洋医学と「森を診る」東洋医学~命の土台を立て直すアプローチの違い

前回のコラムでは、中医学、アーユルヴェーダ、韓医学、そして日本の漢方という「4つの偉大な医学」についてお話ししました。それぞれが独自の進化を遂げてきましたが、共通しているのは「体全体のバランスを整える」という東洋の哲学です。

では、私たちがこれまで病院で受診してきた「西洋医学」と、これらの「東洋医学」(ここでは特に中医学をイメージしています)は、根本的に何が違うのでしょうか?

私たちのイメージは西洋医学はまず薬が思い浮かびます、これに対し東洋医学は自然治癒力といった化学的な薬とは縁遠いイメージを抱きます。私が薬膳を勉強する前のイメージがそうでした。しかし、私が国際薬膳師を勉強してきて、両者の大きな違いは「ターゲットの捉え方」にあるのではと考えるようになりました。

よく使われる例えですが、ここに「葉っぱが枯れかけている1本の木」があるとします。

西洋医学は、枯れかけた「葉っぱ」を徹底的にミクロの視点で観察します。そして、「あ、この葉っぱにはAという害虫がついている」などのように原因を見つけ、その害虫をピンポイントで退治する強力な殺虫剤をまきます。あるいは、枯れた枝ごと外科的に切り落とします。

癌治療でこの葉っぱと木を置き換えると、癌細胞に抗がん剤や放射線治療を行うのがまさに殺虫剤をまくと言うことになり、枝ごと切り落とすがまさに手術により、必要な箇所を切除すると言う外科手術になります。

つまり西洋医学は、ウィルスや細菌、腫瘍などの病気の原因を特定し、それを排除することに特化した医学になります。特に救急救命や、外科手術、急性期の感染症においては、東洋医学では出来ない医学的処置でこれに勝るものはありません。

一方の東洋医学では、枯れた葉っぱだけを見ません。その木が植わっている「土壌(体質)」や「環境全体」をマクロの視点で観察します。 「葉が枯れたのは、土の水分(津液)が足りていないからだ」「根っこ(胃腸)が冷えて栄養(気・血)を吸い上げられていないからだ」と分析し、土壌に水と栄養を与え、日当たりを良くしてあげます。

つまり東洋医学は、「なぜその病気が発生するような体内環境になってしまったのか」を分析し、人が本来持っている生命力を立て直す医学なのです。

日本では医学と言うと西洋医学をイメージしますし、医療機関のほぼすべてが西洋医学に基づいて設置されています。

私が薬膳を学び始めたころ、薬膳の著名な先生に中国の事情を尋ねたことがありました。「中国での医療機関の中医学の割合はどのくらいですか?」と。すると先生は、「ほとんどが西洋医学で大きな病院の中の20%くらいは中医学の治療を行っている」とのことでした。本場、中国でも多くが西洋医学に頼っているのが実情です。

しかし、現代社会では「検査数値は異常がないのに、体調が悪い」という方が急増しています。これは、西洋医学のミクロの検査では原因は見つからないけれど、中医学的に見れば体内の環境が悪化している状態として把握できます。

ここで、日々の不調の改善には中医学の「オーダーメイドの食の処方箋」が力を発揮することになります。

もちろん、西洋医学と中医学は対立するものではありません。

私自身の高齢の母のことはこれまでのコラムで詳細にその状態をご報告してきました。これまで14回にわたる化学療法を続けています。 この時、「がん細胞」という強力な敵を叩き潰すのは、西洋医学の力であったことは間違いのない事実です。

しかし、その強力な薬は、同時に母の体という「土壌」を少なからず荒らしているに違いありません。 そこで、化学薬品におかされた土壌に、中医学と分子栄養学や腸内細菌の知恵を総動員して、麴菌や大建中湯とラクトバチルス菌を注ぎ込み、体を根底から修復し続けてきました。事実、腸内細菌叢の違いで免疫チェックポイント阻害剤の奏効率が倍になることは科学的に証明されています。

西洋医学と東洋医学の融合で、母はこれまでのところ副作用なく治療を乗り越え、驚異的な生命力を維持できてきたと私は確信しています。

敵を叩く「西洋医学」と、命の土台を養う「東洋医学」。 この両輪が揃って初めて、私たちは本当の意味で健康をコントロールできるようになります。これが『Bio Wisdom Japan』が目指す、古代の知恵と現代科学の融合です。

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