【新連載】第4回 / 人体は「小宇宙」~中医学の根幹をなす美しい哲学「整体観念」とは

昨日のコラムでは、西洋医学と東洋医学の違いを「葉っぱ(ミクロ)を診るか、土壌(マクロ)を診るか」という木と森の例えでお話ししました。 病気の原因を特定して排除する西洋医学と、病気が発生した体内環境(土壌)を立て直す東洋医学。両輪が揃うことが真の健康につながるというお話でした。
本日は、その東洋医学(中医学)が、私たちの体や病気をどのようなスケールで捉えているのか、その根底に流れる非常に美しい哲学についてお話しします。
ちょっと哲学的な話しになり、読み飛ばしたい衝動に駆られるかと思いますが、人はこれまで自然の中で生き抜き、自らの体だけが頼りだったことを踏まえると、割と自然に入ってくる概念ですので、気軽に読んでいただければと思います。
この概念と言うのが、中医学の最も重要なベースとなる「整体観念」というものです。
整体と聞くと、骨盤矯正などのマッサージを思い浮かべるかもしれませんが、全く別の意味になります。一言で言うと‟統一性”と言う意味で「全体を一つのまとまりとして観る」という、中医学独自の世界観のことを表します。
そしてこの「整体観念」には、大きく分けて2つの重要な視点があります。
1つ目が、人と大自然は繋がっている、すなわち人と自然の統一性を表すものです。
整体観念の最も美しい視点と呼ばれるものが「天人合一(てんじんごいつ)」という考え方です。 これは人間もそもそも大自然の一部であり、自然界の変化、例えば、季節、気候、時間帯、住んでいる土地などと連動して生きているという考えです。人体は自然界という大宇宙をそのまま小さくした『小宇宙』であるとも表現されます。
「旬の食材を食べる」という薬膳の基本も、単に栄養価が高いからというだけでなく、「その季節の自然のエネルギーを体に取り込み、環境と体のリズムを調和させるため」という、この整体観念に基づいています。
2つ目が、体の中はすべて繋がっている、すなわち人体内部の統一性を表すものです。
西洋医学では、目が痛ければ眼科、胃が痛ければ消化器内科、皮膚が荒れれば皮膚科に行きます。体を「パーツの集合体」として捉え、細分化して専門的に治療します。
しかし中医学では、体の中の五臓六腑から、気・血・津液、そして皮膚や髪の毛、爪の先に至るまで、体はすべて見えないネットワーク(経絡など)で繋がったひとつの生命体であると考えます。
例えば、西洋医学との対比で見てみましょう。「最近、ひどいドライアイで目が疲れるし、よく足がつる」という方がいたとします。栄養医学ではドライアイは眼科を受診し、足がつる症状は整形外科に行けば別々の診断がおります。
しかし中医学の整体観念では「目に栄養を送り、筋肉(筋)をコントロールしている『肝(かん)』の血が不足しているサインだ」と繋げて考えます。痛い場所と悪い場所は必ずしも一致しません。だからこそ、痛い部分だけを見るのではなく、体全体を観察するのです。
ただ、現代の科学から見るとスピリチュアルな要素を含んでいるなと思われるかもしれません。しかし驚くべきことに、現代の最先端科学は、この数千年前の「整体観念」を次々と証明し始めているのです。
例えば、腸に棲息する腸内細菌が脳の感情や神経に直接影響を与える「腸脳相関」は、まさに人体がひとつの有機体である証明と言えます
また、 太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠ホルモンが分泌される「時間生物学」は、人間と自然界の連動そのものと言えます。
私たちの目指す「Bio Wisdom Japan」は、まさにこの部分です。ミクロの視点である「分子栄養学」や「血液データ」「腸内細菌検査」を使いながら、マクロの視点である「整体観念」に当てはめて、人体という『小宇宙』のバランスを読み解くことを目指しています。
そして、今の季節、今の気候、今の皆様の体質に最も調和する「食の処方箋」を導き出せる最適なプログラムを考えているところです。

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