免疫チェックポイント阻害剤に作用する腸内細菌(YB328株)について

今日のコラムは、昨日ニュースで大々的に取り上げられておりました、「免疫チェックポイント阻害剤の作用に関与する新たな腸内細菌(YB328株)を同定し、次世代のがん治療法への応用に期待」から見て行こうと思います。

免疫チェックポイント阻害剤と腸内細菌の関係性は、これまでのコラムで再三にわたり取り上げて参りました。

腸内細菌叢を変えるために、理想的な腸内細菌の構成比の人の便移植することも、欧米では盛んに行われていることもお伝えしてきましたが、昨日のニュースでは、腸内細菌(YB328株)を経口摂取するとあります。

この研究結果は、国立がん研究センター、名古屋大学、京都大学、大阪大学、理化学研究所、産業技術総合研究所の研究グループが7月14日付けで英科学誌「Nature」で論文発表したもので、まさに免疫チェックポイント阻害剤が効きにくい人に腸内細菌(YB328株)を経口投与したところ、癌細胞の縮小がみられたと言うものです。

ちなみに「Nature」は「Cell」「Science」とともに、インパクトファクターも高く、世界で最も信頼できる科学誌です。

現在、免疫チェックポイント阻害剤単独投与や他の薬剤を組み合わせた免疫複合治療も一般的に実施されているのですが、過半数の患者では十分な治療効果が得られていないのが実情ですし、長期間にわたり効果が持続するケースは20%程度にとどまっているのが現状です。

ここに関しては腸内細菌叢により、奏効率は大きく変わると私も認識しておりました。

今回の論文においては、治療効果の差を生む重要な要因の1つとして「活性化したCD8陽性T細胞(とくにPD-1陽性CD8陽性T細胞)」が、がん組織内にどれだけ存在しているかがあげられています。

ちょっと難しい用語が出て参りましたが、要するに免疫細胞であるT細胞ががん組織内にたくさん存在すれば、治療効果が生まれているとしています。

これは、炎症性のがんではCD8陽性T細胞が多く集積しているため、治療効果が得やすいのに対し、非炎症性のがんではこれらのT細胞が少なく、治療効果が得られにくいと言う傾向を示しているようです。

そして、腸内細菌叢が多様で特定の腸内細菌が存在しているかどうかにも、治療効果が影響するとあります。

具体的な腸内細菌についても触れられていますが、後日、これに関してはもっと突っ込んでいきたいと思います。

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